多摩美術大学ユニオンとは

 

 多摩美術大学ユニオン(プレカリアートユニオン多摩美術大学支部)は、常勤・非常勤の雇用契約を区別することなく、組合員になることができる労働組合です。

 

 組合は、労働者の権利を守り、労働条件を改善するため、大学と交渉する法的権利である「団体交渉権」を持っています。わたしたち多摩美術大学ユニオンは、大学から独立し、「労働組合法」によって守られている組織です。

 

 多摩美術大学ユニオンは、職場環境の改善に努め、大学をよりよい教育・研究の場にするための活動に取り組んでいます。

 

 

結成のあゆみ

 

 多摩美術大学ユニオンは、大学内で起こった教員への不当な配置転換を防ぐ団体交渉を行うため、2019年に結成されました。ユニオンを通じ、大学と交渉を重ねた結果、当該教員の雇用を守ることができました。当ユニオンの結成をめぐっては、2020年1月に「ウェブ版美術手帖」が経緯を報じています。本件のくわしい背景については、ユニオンメンバーの荒木慎也さんの記事をご参照ください。

 

 多摩美術大学の前身は、1935年に創立された多摩帝国美術学校です。設立80年以上を経てはじめて、2019年に労働組合が結成されました。それまで一度も、多摩美術大学では組合が組織されたことがありませんでした。同じく私立の美術大学である武蔵野美術大学では、1970年代に労働組合が結成されています。なぜ、多摩美術大学には組合が存在しなかったのでしょうか。

 

 これは、1969年7月に多摩美術大学の学生により結成され、反体制運動を展開した「美共闘(美術家共闘会議)」の〈反動〉として捉えることができるかもしれません。このように、本邦の美術教育史の観点から見ると、多摩美術大学に組合が存在しなかったこと(組織できなかったこと)は、とても興味深い事態であるといえます。

 

 労働者一人ひとりが自らの権利を守るため、ユニオンを活用することは、ごく当然のことです。多摩美術大学ユニオンの第一義は、よりよい職場環境を求めることにあります。ここでの「よりよい職場環境」とは、よりよい教育・研究環境を指しています。

 

 2020年4月から、ユニオンメンバーを中心に、学内共同研究「アフター・リチャード・セラ」が始動しました。これは、多摩美術大学八王子キャンパスに設置されている、リチャード・セラの彫刻作品についての共同研究です。また2021年度は、非専任教員が科学研究費申請をするための研究者番号の付与を求める取り組みを行っています。

 

 こうしてユニオンを通じ、研究の輪が広がり、学生にとって、また教職員にとって、多摩美術大学がますます魅力的な大学となるために、当ユニオンは活動しています。

 

2023年3月18日追記:

団体交渉の結果、非常勤講師が科研費に応募できるようになりました。交渉の手法を公開しています

 

(文責:小田原のどか)

 

よくあるご質問

 

Q. 組合員であることで不利益な扱いをされるのではと心配です。

A. 組合員であることを理由に不利益な取り扱いをすることは不当労働行為であり、労働組合法違反です。

 

Q. 組合員に対する処分があるのではと不安です。

A. 組合活動は、日本国憲法第28 条(団結権、団体交渉権、団体行動権)によって保障されています。組合活動を理由に処分されることはありません。

 

Q. 組合活動が昇任や内部登用など、人事に影響するのではと不安です。

A. 教員・職員ともに、組合活動が昇任や内部登用などの人事に影響することはありません。

加入のご案内

 

 多摩美術大学ユニオンはプレカリアートユニオンの支部です。多摩美術大学ユニオンに加入を希望される方は、プレカリアートユニオンへ加入いただくことになります。

メンバー

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荒木慎也(リベラルアーツセンター非常勤講師)

 

プロフィール

専門は近現代美術史、美術教育学。主な著書に『石膏デッサンの100年―石膏像から学ぶ美術教育史』(アートダイバー、2018年)。多摩美術大学には2014年よりリベラルアーツセンター非常勤講師として勤務。

 

メッセージ

 私が多摩美術大学の教育と労働の問題に関心を持ったのは、2018年に発生した彫刻学科のハラスメント問題です。彫刻学科の問題をきっかけに、私が指導していた学生や職場の同僚も被害に遭っていたかもしれない、私も見て見ぬ振りをしていられないという危機感を持つようになりました。

 美術系大学の中で、実技を教える専門科目と違い、リベラルアーツの非常勤講師は、大学の運営や教育方針について深く関わる機会を持たず、私も多摩美術大学とは週に一度担当した授業を教えるだけの関係しかありませんでした。しかし、大学の本質的な問題からリベラルアーツが周辺化されているという構造そのものが、美術系大学の実践重視・学術軽視の風潮を作り出し、それがひいては閉鎖的な研究教育環境につながっているのではないか、と考えるようになりました。

 私の目的は、組合員としての活動を通じて学内の教育研究環境の改善を訴えるとともに、美術教育の研究者として取材を行うことです。多摩美支部の活動や、多摩美の変化を本ブログや学術論文で発表していくことを通じて、教育研究環境に悩みを抱えている人たち、学内のさまざまな問題に苦しんでいる人たちの一助になることを願っています。

 

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小田原のどか(情報デザイン学科・芸術学科非常勤講師)

 

プロフィール

彫刻家、評論家、出版社代表。博士(芸術学)。著書に『近代を彫刻/超克する』(講談社、2021年)、編著に『彫刻の問題』『彫刻1』。主な展覧会に「あいちトリエンナーレ2019」など。

 

メッセージ

 私は2008年に多摩美術大学彫刻学科を卒業しました。同学科に在学していた際に感じていた違和については、2017年に表象文化論学会のインタビューでも話しています。2018年に彫刻学科の後輩たちが起こしたアクションについて知り、そして彫刻学科教員・笠原恵実子さんの雇用を守る取り組みを応援するため、2019年にユニオンに加入しました。

 ここで団体交渉に立ち会い、あらためて、美術大学のジェンダー不均衡の根の深さを目の当たりにしました。他方で、ユニオンを通じた取り組みの実効性を実感し、構造の問題をいかに変えていけるのかを考えるうえで、ユニオンはとても有効であると知ることができました。

 現在は、2021年4月から始動した「非専任教員に科学研究費申請のための番号付与を求める取り組み」を発起・主導しています。また、2021年10月に、多摩美術大学ユニオン(プレカリアートユニオン多摩美術大学支部)初代支部長に選出されました。母校がよりよい研究の場として、高等教育の場として機能するための一助として、ユニオンを活用してゆきたいと考えています。

 

2023年3月18日追記:

団体交渉の結果、非常勤講師が科研費に応募できるようになりました。交渉の手法を公開しています

 

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笠原恵実子(彫刻学科教授)

 

プロフィール

アーティスト。西洋中心主義への批評的視座を有し、綿密なフィールドワークを通じた制作を行う。近年の展覧会に「PARASOPHIA:京都国際現代芸術祭」(京都、2015)、「ヨコハマトリエンナーレ2014」など。

 

メッセージ

 私は多摩美術大学彫刻学科を卒業後、主に国外でアーティストとして活動をしてきました。2014年より教員として同学科で教える立場となり、自由でリベラルであると思っていたアートの教育・研究の場に、理不尽なアカデミックハラスメントやパワーハラスメントが多く存在することを経験しました。

 日本社会に温存されるヒエラルキーやジェンダー不平等といった父権的権力勾配は、ハラスメントや不必要な自己規制を生み、機能不全を起こしてしまう。私は母校である美術大学でこういった様子を目の当たりにし、大きな衝撃を受けました。

 これまでアーティストとしてジェンダーやポストコロニアルな問題を提起し制作を行ってきましたが(参考:「彫刻とジェンダー、美大の状況。 アーティスト・笠原恵実子インタビュー」)、そういった活動だけでは到底変えることのできない構造的問題に、私は直面することとなったのです。

 多摩美術大学ユニオンはこういった状況を変革し、より自由で平等な教員・職員間の関係を築くために作りました。多摩美術大学がより良い研究とアートを創出する国際的な場であるために、これからもユニオンを活用し発言していきたいと思っています。

 

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匿名組合員

メッセージ

 嘱託職員として多摩美術大学に入職したのは2017年12月。以降1年ごとに契約更新を繰り返し5年目に入っていた2022年3月末、次回4月の更新で「同年12月での契約終了」とともに「更新なし」であることが人事課から通告されました。大学は年度のサイクルで動いているにもかかわらず、年度途中である12月、しかも「入職日の前日」で雇用を終了すると通知してきたのです。5年近く働いてきた職場では、担当している業務やプロジェクトが12月以降も続くため、所属長を通じて雇用継続の要望を出しました。しかし、大学からの回答は「無期転換逃れ」としかとれない内容を理由とした雇用継続を拒否するものでした。

 労働契約法では、有期労働者が同一企業との雇用期間が通算5年を超えたとき、労働者の申込によって期限の無い「無期契約」に転換できることが定められています。しかし、多摩美術大学では嘱託職員の雇用期間を5年上限とする「不更新条項」が設けられています。仕事がなくなる訳でもなく、これまでと変わりなく働けるにもかかわらず、無  期転換権が発生する直前での雇止めが当たり前に行われています。

 また、有期雇用の教職員に対してクーリング期間を悪用した再雇用も横行しています。5年超えを前に一度契約を切り、契約期間がリセットされる半年後に再び雇用を結ぶ潜脱的な方法です。このように5年を超えない期間をサイクルとした再雇用も、無期転換逃れ以外のなにものでもありません。5年にわたり築いた経験やスキル、信頼をゼロにすることは、労働者にとっても職場にとっても明らかに不利益であり、こうした雇用慣行が職員の日々のモチベーション低下につながっているとも感じていました。

 12月での契約終了を通告されてから半年後、所属長を通して大学へ再び雇用継続を訴えましたがこれも拒否されたため、すでに加入していたユニオンを通じて団体交渉を行い、雇止めの撤回と雇用継続を求め続けました。団交の場でも大学側は無期転換逃れとしか言いようのない理由をつけて拒んでいましたが、数回にわたる団交と事務折衝を行った結果、12月での雇止めを撤回することができました。

 団交と事務折衝により雇用継続を実現した私は、就業期間が5年を超えた当日、大学へ無期転換を申入れました。そして新たな契約が更新された2023年4月より晴れて無期雇用となりました。多摩美術大学では初めての事例ではないかと思われます。

 団体交渉では、有期職員の無期転換を認めることや正規雇用への登用を積極的に行うなど、期限付き教職員の雇用を不安定にさせている労働条件やあいまいな人事考課の改善も訴えました。有期雇用だからといって“使い捨て”のような扱いを許すことはできません。誠実に仕事をして大学に貢献している職員をちゃんと評価してほしいのです。

 また、学内には不本意な雇止めやクーリング期間を挟んでの再雇用を迫られている教職員の方がいると思います。無期転換逃れは違法行為です。理不尽な雇止めには異議を申し立て、撤回させることができます。どうしていいかわからずに悩んでいる方がいましたら、ぜひ多摩美支部に相談してください。

 

 

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ほか教員3名

(50音順、2023年5月1日更新)

お問い合わせ

 

contact@tau-union.com

 

ユニオンについてのお問い合わせとともに、職場内ハラスメント(目撃なども含みます)のご相談も受け付けています。お気軽にご連絡ください。

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